補中益気湯と十全大補湯の特徴・違い【漢方・生薬比較】

くくたる@薬剤師
くくたる@薬剤師

こんにちは!

くくたる(twitterはコチラ)です!

【薬剤師歴11年目】
●フリーランス薬剤師
●管理薬剤師歴:調剤3年、OTC1年目
●1人薬剤師歴(調剤):2年

【漢方薬・ハーブの資格】
国際中医師
●ハーバルセラピスト
●シニアハーバルセラピスト
※国際中医師は医師免許ではありません。

 

日本感染症学会のコロナウイルスに対する漢方薬に対する考え方が公開され、症状別に漢方薬が紹介されました!

 

その中でも予防として補中益気湯と十全大補湯が紹介されており、これらの漢方薬を正しく使用するためにも使い分けを知っておく必要があると思ったので紹介をします!

 

西洋薬と比較して、漢方薬は適応ではなく1人1人の証にあわせて薬剤選択を行うため、未知の病気に対して強みがありますが、体質に合わせる必要があるところは注意をしていきたいです!

 

補中益気湯とは

 

補中益気湯の構成生薬

黄耆(オウギ)、白朮(ビャクジュツ)、人参(ニンジン)、当帰(トウキ)、柴胡(サイコ)、大棗(タイソウ)、陳皮(チンピ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、升麻(ショウマ)

 

補中益気湯はどのような人に使うか?

気虚証

気虚の時に出る症状です! 気を補給することで気虚を改善します!

 

気虚は疲れやだるさ、身体が冷える(温煦作用)、抵抗力が落ちる(衛気・防御作用)、やる気が出ない、食欲が落ちるなどの症状です! 

※気の作用についてはコチラ

 

補中益気湯の生薬の特徴

●黄耆・柴胡・升麻の組み合わせ!

※黄耆は単体でも可能、柴胡と升麻は組み合わせが大切!

 

これらの組み合わせは升提(しょうてい)作用といって、臓器などの下垂したものを持ち上げる作用が期待できます!

 

だらんとした臓器が引き締まって持ち上がるイメージです!

脱肛や胃下垂、子宮下垂などの時に補中益気湯が使われるのはこのためですね! 

 

●補気(気を補充する役割)のある生薬:黄耆、人参、白朮、大棗、甘草

気を補うことで、全身的な機能面の改善が期待できます!

元気にする薬というイメージにも納得ですね!

 

補中益気湯の効能・効果(市販薬)

体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒

十全大補湯とは

 

十全大補湯の構成生薬

人参(ニンジン)、黄耆(オウギ)、地黄(ジオウ)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、センキュウ、桂皮(ケイヒ)、甘草(カンゾウ)

 

十全大補湯はどのような人に使うか?

気血両虚証

気虚と血虚がどちらも生じている時に出る症状です! 気と血を補給して気虚・血虚を改善します!

 

補中益気湯と同様ですが、気虚は疲れやだるさ、身体が冷える(温煦作用)、抵抗力が落ちる(衛気・防御作用)、やる気が出ない、食欲が落ちるなどの症状です!

※気の作用についてはコチラ

 

血虚は痩せる、貧血、顔色が青白い、筋肉のつり・けいれんなど、栄養が足りていないことで生じる症状・状況ですね!

※血の作用についてはコチラ

 

十全大補湯の生薬の特徴

●四物湯(しもつとう)+四君子湯(しくんしとう)+桂皮+黄耆の組み合わせ!

 

四物湯は、地黄、当帰、芍薬、川芎の4つからなります!

地黄、当帰、芍薬が血を補給する作用があり、センキュウが補給した血を全身に運ぶ役割をします!

 

四君子湯は、人参、蒼朮、茯苓、甘草の4つからなります!

人参、甘草が気を補給し、蒼朮と茯苓が水分代謝を改善します!

※脾は湿気に弱く、水分が溜まることで消化吸収の能力が落ち、消化吸収がうまくいかないと気が生成できないためですね!

 

●桂皮と黄耆の役割について!

黄耆は気を補給し、桂皮は内部から温め気や血を全身に巡るようにしてくれます!

 

十全大補湯の効能・効果(市販薬)

体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血

まとめ

①補中益気湯は気を補給する! また、臓器を引き締め持ち上げる作用がある!

気虚は食欲がないことなどから気の生成が出来ずに起こるので、食欲不振で疲れやすい人は気虚を疑うといいと考えられます!

 

②十全大補湯は気と血を補給する! 痩せたという方は血虚もある可能性を疑う!

同じく食欲不振や疲れやすさは共通ですが、さらに痩せてしまう、皮膚の乾燥や血色が悪い、目の疲れなどの血虚症状も現れる場合には十全大補湯が候補になると考えられます!

 

③気を補給(補気)する生薬:人参、黄耆、白朮、大棗、甘草

※厳密には、甘草は補気作用というよりもバランスをとるための調整作用としての配合です。

 

④血を補給(補血)する生薬:地黄、当帰、芍薬

 

くくたる@薬剤師
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蒼朮と白朮の配合はメーカーによってバラバラです!

 

違いは、蒼朮は利水(水の流れを整える)作用がメイン、白朮は補気作用がメインで利水も行うと考えると良いと思います!

市販薬の紹介

【注意点】

①治療中の病気がある方

②使用中のお薬がある方

③副作用やアレルギーを経験されたことがある方

上記に当てはまる方は、医師や薬剤師に相談した上で使用の判断を行うようにしてください。

 

【服用期間】

体質改善の場合はできれば14日間程度は服用を続けていただき、何かしらの変化があるか確認をしていただくと良いと思います。

 

補中益気湯

 

十全大補湯

最後に

というわけで、今回は補中益気湯と十全大補湯の違いについて紹介しました!

今回の記事を動画で観る・聴く場合はコチラ!※Youtubeにリンクします

 

生薬構成は覚えにくいと思いますが、補気や補血の生薬は覚えておくと後々楽になると思います!

 

くくたる@薬剤師
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個人的には、四物湯は「とうき・しゃくやく・せんきゅう・じおう!」」の順で詠唱してたら自然に覚えられました!

 

 

くくたる@薬剤師
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最後まで見ていただきありがとうございます!

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