こんにちは!
くくたる(twitterはコチラ)です!
【薬剤師歴11年目】
●フリーランス薬剤師
●管理薬剤師歴:調剤3年、OTC1年目
●1人薬剤師歴(調剤):2年
【その他資格】
●国際中医師
●ハーバルセラピスト
●シニアハーバルセラピスト
※国際中医師は医師免許ではありません。
セフェム系抗菌薬は、第一世代はグラム陽性菌に強く、第二、第三世代と移行するにつれてグラム陰性菌にも効くようになり、グラム陽性菌にへの強さは減ると言われておりますよね。
それ、本当なんでしょうかね?
教科書にも載ってるくらいですから間違いはないのでしょうが、気になってしまったのでまとめてみました。
私は調剤薬局で働いているため、今回は内服薬に絞って考察・紹介をします!
[quads id=2]
時間依存性(Time above MIC)の考え方
Time above MIC:MIC以上の濃度を持続している時間
MIC(最小発育阻止濃度):対象となる菌を抑制するのに必要な抗菌薬の最小濃度。
この図を見たことがある人は多いのではないかな?と思います! MIC(赤ライン)以上の濃度の血中濃度でいれる時間がどの位か予測できればいいわけですよね!
ちなみにTime above MICに当てはまる抗菌薬は、MICの4~6倍以上の濃度になると殺菌効果は変わらないと考えられておりますので、濃くすればいいというわけではないこともポイントです!
Time above MICで使用するパラメータ
①MIC
②血中薬物濃度(Cmaxから予測)
③T1/2
④Tmax
の4つがあればある程度予測できます!
[quads id=2]
セフェム系内服薬一覧
セフェム系は時間依存性(Time above MIC)に当てはまる薬剤です!
セフェム系内服薬一覧の見方
①MICを確認する!
②薬剤のCmaxと半減期(T1/2)より、MIC以上の濃度でだいたいどの位の時間作用するか予測する!
※各薬剤のインタビューフォームに記載あるMICの情報と、オラセフとバナンについては抗菌薬インターネットブックのMICを参考にしております。
ブドウ球菌(グラム陽性菌)
※画像クリックで拡大表示されます。
※赤字が添付文書上の適応菌種
●トミロン(セフテラム)、セフテム(セフチブテン)はブドウ球菌に適応がない点!
●バナン(セフポドキシム)はブドウ球菌に適応はあるが、黄色ブドウ球菌には効き目が期待できなさそうな点!
このあたりが第三世代セフェムが、第一世代と比べてグラム陽性菌に弱いと言われている理由なのでしょうかね…?
レンサ球菌(グラム陽性菌)
※画像クリックで拡大表示されます。
※赤字が添付文書上の適応菌種
ざっくり全体を見渡すと、
●ケフレックスは肺炎球菌に適応はあるが、効き目が期待できなさそうな点!
●セフテム(セフチブテン)以外の第三世代は、化膿レンサ球菌、肺炎球菌以外のレンサ球菌にも効果が期待できる点!
●共通して緑色レンサ球菌には効果が期待できない点!
このあたりが比較ポイントになるでしょうか!
フロモックス(セフカペン)の表皮ブドウ球菌を例とすると
●MIC:0.2μg/mL
●100mgのCmax:1.28μg/mL
●半減期(T1/2):約1hr
なので、半減期(1hr)ごとに考えると
1.28→0.64→0.32→0.16→0.08
と血中濃度が減っていくと予測できます。
表皮ブドウ球菌のMICが0.2μg/mL以上のため、2~3hr近くはMIC以上の濃度を維持できると考えられます。
※厳密には、Tmax:1.3hrの間にも0.2μg/mL以上になる時間も考慮する必要はあると思います。
[quads id=2]
第三世代セフェム系内服薬は吸収率が悪いから効かない!?
第三世代セフェム系内服薬は、皮膚感染症や気道感染症、中耳炎などでよく使われておりますよね!
よく使われてはおりますが、吸収されない(バイオアベイラビリティが低い)から効かないという話もそこそこの頻度で耳にします。
血中濃度とMICの関係だけで見ると、第三世代セフェムも効かないことはないと考えられるのですが、感染部位に抗菌薬が到達しなければ効果が発揮しないためこのように考えられているのだと思います。
フロモックスのインタビューフォームを参考にすると
【患者さん対象】
肺組織中濃度:血清中濃度の約40%
皮膚組織内濃度:ばらつきが多い。150mg投与による最高濃度は0.77mg/g
血清中濃度(mg/mL)のばらつきが多いため、移行量の割合は不明。
耳鼻咽喉科領域組織:
扁桃、中耳分泌液中:血中濃度のほぼ1/2
上顎洞粘膜、上顎洞貯留液中:血中濃度と同程度
皮膚組織内濃度は現時点での私の知識では判断が難しいですが、肺組織中濃度や耳鼻咽喉科領域については、原因菌によっては問題なく効くのではないかと考えております。
よりベストな薬剤がある可能性は否定できませんが…。
例えば細菌性肺炎であれば、肺炎球菌やインフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、モラクセラ・カターラリス、肺炎桿菌などが原因菌と考えられます。
今回の記事では黄色ブドウ球菌と肺炎球菌のみですが、
黄色ブドウ球菌のMIC:0.39~0.78μg/mL
肺炎球菌のMIC:0.006~0.025μg/mL
フロモックス100mgのCmax:1.28μg/mL
肺組織中濃度は血清中濃度の約40%なので、
1.28×0.4=0.512
なので、少なくとも肺炎球菌には強く出れるのではないか?と考えております。
また、黄色ブドウ球菌については強く出れるかは疑問です! このあたりが第三世代セフェムが、第一世代と比べてグラム陽性菌に弱いと言われている理由なのだと思います。
※フロモックスはインフルエンザ菌、肺炎桿菌、モラクセラ・カタラーリスにも適応があり、感受性もあります。後日別記事で紹介します。
[quads id=2]
参考文献
各薬剤のインタビューフォーム
抗菌薬インターネットブック
抗菌薬の考え方、使い方 ver.4 魔弾よ、ふたたび…
タイトルだけ見ると「魔弾よ、ふたたび…」などちょっとふざけた感じがしてしまいますが、医師の使用感などが話言葉で書かれていて、とても読みやすく勉強になる本でした!
セフェム系でいうなら注射薬の情報が多いですが、内服薬についても触れられているため非常に参考になりました!
薬がみえる vol.3
病気がみえる、薬がみえるなど、有名なシリーズですね!
「薬剤の情報」はもちろんですが、「菌の種類の情報」や「呼吸器感染症など疾患別の情報」もあるため、抗生物質の勉強に苦手意識のある私も読みやすかったです!
私が学生の頃は病気がみえるが1~3巻くらいまでしか出ていませんでしたが、今や種類も増えてかなり大御所感がありますねw
最後に
というわけで、今回は時間依存性であるセフェム系内服薬のブドウ球菌、レンサ球菌に対するMIC一覧の紹介でした。
抗生物質は、菌種やMIC、時間依存性、濃度依存性、組織移行性など、様々なパラメータがあり苦手とする分野の1つです…。
さすがに表は間違えていないはずですが、考え方などで問題ある部分があれば教えていただけると助かります!
後日、グラム陰性菌についても表の紹介予定です!
コメント