MAO-B阻害薬の選択性の比較と選択性低下の可能性【セレギリン、ラサギリン、サフィナミド】

くくたる@薬剤師
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【薬剤師歴11年目】
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【その他資格】
国際中医師
●ハーバルセラピスト
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※国際中医師は医師免許ではありません。

 

今回はMAO-B阻害薬のMAO-B阻害の選択性を、添付文書やインタビューフォームを参考にまとめます!

MAO-B阻害薬の選択性の比較

代表的なMAO-B阻害薬はセレギリン、ラサギリン、サフィナミドの3つです!

 

※ゾニサミドも「MAO-B阻害作用がある」と記載がありますが今回の記事には含めておりません。

※リネゾリドは「非選択的、可逆的MAO阻害作用がある」と記載がありますが今回の記事には含めておりません。

※非選択的MAO阻害薬であるサフラジンは販売中止、MAO-A阻害薬は日本では販売されていません(22.01.27時点)。

 

セレギリン(商品名:エフピー)の添付文書、IF参考

●MAO-Bの選択性はMAO-Aに対する作用の約1000倍(IC50、ラット脳ホモジネート、in vitro)。

●MAO-Bの選択性はMAO-Aに対する作用の約200倍(ED50、ラット脳、ex vivo)

過量投与によりMAO-B選択的阻害作用が低下し、非選択的MAO阻害による副作用が発現することがあると考えられる。

●MAO-B阻害作用は不可逆的。

 

セレギリンは過量投与によりMAO-B選択的から非選択的な状態になる可能性があると考えらえており、その根拠がインタビューフォームでグラフ化されておりました!

セレギリンのMAO-B阻害の選択性(インタビューフォーム抜粋)

※グラフを見やすくするため赤線・青線を引いております!

※ラット脳ホモジネート、in vitro

 

①MAO-Bを50%阻害する場合のセレギリンの濃度では、MAO-Aはほとんど阻害されていないと考えられます!(赤線

②MAO-Bを100%手前まで阻害する場合のセレギリンの濃度では、MAO-Aも90%近く阻害されると考えられます!(青線

 

くくたる@薬剤師
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このグラフはラット脳ホモジネート、in vitroでの場合のため、ヒトの場合にどの程度阻害されるかの判断は私には難しいです!

 

ただ、セレギリンの濃度が高くなればなるほどMAO-Bに対する選択性が低下する可能性があることはわかります!

 

ラサギリン(商品名:アジレクト)の添付文書、IF参考

●ラサギリンのヒト及びラットにおける脳内MAO-B阻害の50%阻害濃度(以下、IC50)は、MAO-A阻害におけるIC50の1/20~1/90であった(in vitro)。

●ラサギリンのMAOに対する阻害活性をセレギリンと比較検討したとき、MAO-A阻害が軽微に認められるものの、ラットの脳内MAO-Bを80~90%阻害する1日投与量は、ラサギリンはセレギリンの約1/20であった(in vivo)。

●MAO-B阻害作用は不可逆的。

 

上記のように記載されておりますが、ラサギリンもセレギリンと同様に過量投与による選択性の低下の可能性が考えられております!

 

過量投与に関する記載

本剤3〜100mgの過量投与により軽躁、高血圧クリーゼ、セロトニン症候群等の症状が報告されている。

※本剤の用法及び用量「通常、成人にはラサギリンとして1mgを1日1回経口投与する。」

 

3倍量以上からセロトニン症候群などの副作用が報告されており、ラサギリンには適宜増減がついていないことも考慮して、過量投与には注意が必要であると考えられますね!

 

サフィナミド(商品名:エクフィナ)の添付文書、IF参考

●サフィナミドのMAO-Bに対する阻害作用は、MAO-A阻害作用よりヒト脳で約1000倍強かった(IC50)。

●サフィナミド経口投与1時間後の脳内MAO-B阻害のED50値は1.1mg/kgであったが、MAO-Aに対しては60mg/kgでも影響しなかった。(ラット)

●MAO-B阻害作用は可逆的。

 

サフィナミドは、セレギリンやラサギリンと比べて2つの特徴があります!

①過量投与の項目が設定されていない点!

②MAO-Bを可逆的に阻害する点!

 

セレギリン、ラサギリンは過量投与によるMAO-B阻害作用の選択性の低下の可能性が考えられておりますが、サフィナミドには過量投与の設定がされておりません!

また、ラットにおいてMAO-B阻害のED50値(1.1mg/kg)に対して約55倍量(60mg/kg)投与してもMAO-Aには影響しなかった点から、過量投与によるリスクは低いと考えられます!

 

このような理由から「MAO-B選択性の低下を考慮しなくてもいいのか?」と疑問に思ったのですが、そんなことはありませんでした!

 

MAO-B選択性の低下に関する記載

交感神経刺激剤との併用により、MAO-B選択性が低下した場合、交感神経刺激作用が増強され高血圧クリーゼを含む血圧上昇が発現するおそれがあるため設定した。

※交感神経刺激剤:エフェドリン、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン、フェニルプロパノールアミン含有医薬品

 

上記のように記載があり、副作用の項目にもセロトニン症候群などがあるため、サフィナミドもMAO-B選択性低下の可能性について、念のため注意しておかないといけませんね!

※個人的には選択性低下のリスクは低いと考えております。

参考文献

くくたる@薬剤師
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今回の記事で私が参考にした資料を紹介します

※青本は私が国家試験の時に使用していたものです!

 

インターネット

エフピーOD錠2.5の添付文書

エフピーOD錠2.5のインタビューフォーム※PDF直リンク

アジレクト錠1mg/0.5mgの添付文書

アジレクト錠1mg/0.5mgのインタビューフォーム※PDF直リンク

エクフィナ錠50mgの添付文書

エクフィナ錠50mgのインタビューフォーム※PDF直リンク

 

書籍

最後に

というわけで、今回はMAO-B阻害薬の選択性について紹介しました!

 

デキストロメトルファンの禁忌に「MAO阻害薬投与中に禁忌 」の記載があり、MAO-B阻害薬の禁忌薬剤にデキストロメトルファンの記載がないことが疑問で調べはじめたのですが、情報量が多すぎたため記事を分割することにしました…!

 

デキストロメトルファンとMAO阻害薬についてまとめた記事はコチラです!

デキストロメトルファンはMAO-B阻害薬に禁忌?疑義照会は?セロトニンとドパミンに対する機序

 

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