5α-還元酵素阻害薬の作用を構造式で比較【ザガーロ・プロペシア】

くくたる@薬剤師
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【薬剤師歴11年目】
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【その他資格】
国際中医師
●ハーバルセラピスト
●シニアハーバルセラピスト
※国際中医師は医師免許ではありません。

 

同種同効薬の比較って難しいと私は感じておりますが、意外と患者さんやお客さんから「この前の薬と比べて強いの?」みたいな感じで聞かれることは少なくないと思います!

 

なので今回は、5α-還元酵素阻害薬であるフィナステリド(プロペシア)とデュタステリド(ザガーロ)についての違いについて記事にしたいと思います!

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5α-還元酵素(5α-レダクターゼ)とは?

テストステロン→ジヒドロテストステロン(DHT)に変換する酵素ですね!

ここまではわかる方が多いと思いますが、どこが還元されているかご存知でしょうか?

5α-還元酵素により、画像の赤丸の部分が還元されるわけですね!

それぞれの薬の添付文書抜粋

フィナステリド(プロペシア)

適応:男性における男性型脱毛症の進行遅延

作用機序:

フィナステリドは、5α-還元酵素Ⅱ型を選択的に抑制することによりテストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を阻害し、発毛作用を示すものと考えられる。

 

【ステロイドホルモン受容体に対する作用】

フィナステリドは、in vitroにおいて、ハムスター又はラット由来のステロイドホルモン受容体に対する親和性を示さず、ヒト又はラット由来の5α-還元酵素以外のステロイドホルモン生合成酵素に対する阻害作用も極めて弱かった。

 

【ホルモン様作用】

フィナステリドは、マウス、ラット又はウサギにおいて、エストロゲン様作用、抗エストロゲン作用、ゴナドトロピン分泌抑制作用、アンドロゲン様作用、プロゲスチン様作用及び抗プロゲスチン作用を示さなかった。

 

デュタステリド(ザガーロ)

適応:男性における男性型脱毛症

作用機序:

デュタステリドは、テストステロンをジヒドロテストステロンへ変換する1型及び2型5α還元酵素を阻害する。ジヒドロテストステロンは男性型脱毛症に関与する主なアンドロゲンである。

 

【血清中のジヒドロテストステロン濃度低下作用】

血清中のジヒドロテストステロン濃度低下作用男性の男性型脱毛症患者に本剤0.1及び0.5mgを1日1回24週間反復経口投与したとき、24週時の血清中ジヒドロテストステロン濃度はベースラインからそれぞれ83.6及び90.9%減少した。

 

【頭皮中のジヒドロテストステロン濃度低下作用】

男性の男性型脱毛症患者に本剤0.1及び0.5mgを1日1回反復経口投与したとき、投与6ヵ月のジヒドロテストステロン濃度はベースラインからそれぞれ血清中で65及び90%減少し、頭皮中で40及び52%減少した(調整済み平均値)。また、本剤投与による頭皮中ジヒドロテストステロン濃度の低下と発毛作用(毛髪数のベースラインからの増加量)との間には関連性がみられた(外国人のデータ)。

 

デュタステリド(アボルブ)

適応:前立腺肥大症

作用機序:

デュタステリドは、テストステロンをジヒドロテストステロンへ変換する1型及び2型5α還元酵素を阻害する。ジヒドロテストステロンは前立腺肥大に関与する主なアンドロゲンである。

 

【血清中のジヒドロテストステロン濃度低下作用】

前立腺肥大症患者に本剤0.05〜2.5mgを1日1回反復経口投与したとき、血清中ジヒドロテストステロン濃度は投与2週までに速やかに低下した。反応は用量依存的であり、投与6ヵ月の0.5mgによる減少は89.7%と2.5mgと同程度で最大であった。
(注)本剤の承認用量は1日1回0.5mgである。

 

【前立腺組織中のジヒドロテストステロン濃度低下作用(外国人のデータ)】

前立腺肥大症患者に本剤0.5mgを1日1回反復経口投与したとき、投与3ヵ月の前立腺組織中ジヒドロテストステロン濃度はプラセボ投与と比較して93%減少した。

 

結論を書くと、

●フィナステリドは5α-還元酵素の2型を阻害

●デュタステリドは5α-還元酵素の1、2型を阻害

します。

※あえてアボルブも記載しているのは、前立腺組織中にも移行し、ジヒドロテストステロン(DHT)を減少させることを提示しておきたかったからです。

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どちらが効果があるのか?

デュタステリド0.5mgとフィナステリド1mgの比較が、デュタステリドの製品のインタビューフォームに記載があります。

 

発毛効果(頭頂部円内(直径 2.54cm 円中))の変化量は、デュタステリドの方が優れているとの結論が出ております。

24週間(約6か月)時点での比較グラフが載っており、比較の母数もそれぞれ約150ずつでとっていますね。約150としたのは、私が統計苦手だからです…。できればインタビューフォームを直接見ていただくことをオススメします。

 

ちなみに、デュタステリドがフィナステリドよりも効果が約1.6倍といわれるのは、このグラフから求めているものと考えられます。

構造式の比較

というわけで、いよいよ構造式の比較です。

 

テストステロンと非常に似た構造をしておりますので、酵素が勘違いをしてこれらに反応してしまうことが想像できますね!

ちなみに両者の違いは、ステロイド骨格のD環の17位の置換基が違うのみです!

 

ポイントは、

●F(フッ素)が置換基についていること!

●置換基の構造が大きいこと!

ですね!

 

まずはF(フッ素)についてですが、特徴として電気陰性度が非常に大きいことと、原子の大きさが比較的小さいこと!

私がいつも紹介している本(下部にリンク記載します)によると、この特徴によりC-F結合が強く構造式が壊れにくくなるとのことです。

 

また、外用ステロイドの比較にはなってしまいますが、構造式で比較すると17位の置換基の構造が大きいものがランクが高くなる傾向にあります。例えば、ベタメタゾン吉草酸エステル(リンデロンV)とベタメタゾンジプロピオン酸エステル(リンデロンDP)など。

こういった理由より、構造式の比較として考えてもデュタステリドの方が作用や持続時間が強いことが予測されます。

※プロペシア(フィナステリド)1mgの半減期:約4時間、ザガーロ(デュタステリド)0.5mgの半減期:約89時間

最後に

というわけで、今回はフィナステリドとデュタステリドの構造式の比較と作用時間、作用の比較の考察でした。

 

どのくらい強いか? どのくらい効果があるか? については、インタビューフォームなどで数値比較をする必要がありますが、少なくともステロイドは構造式を比較して作用時間の長短や作用強度の予測が立ちやすいため、構造式の知識をなんとなくでも残しておくと便利かもしれませんね!

 

私はハーブに含まれる成分を考察したいというのが構造式を勉強する1番の理由だったりします。

 

次回は前立腺肥大などで話題に上がるノコギリヤシに含まれるβ-シトステロールとスティグマステロールについて考察していきたいと思っています! そのためにアボルブの添付文書情報も載せたわけですね!

くくたる@薬剤師
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